2.27.2013

『日本にも行きますよ♫』


haja&Chi
イタリア ヴァイオリン チェロ 作家
永石勇人 清水ちひろ

 劇場テアトロ・ポンキエッリは、毎年秋から春にかけて数々のコンサートやオペラ、クラシックバレエ、ダンスの催し物で賑わいます。



テアトロ内の10番ボックス席
 劇場の歴史は古く、さかのぼる事1747年…当時の貴族からなるグループが街に仮のホールなどの代わりとなる劇場を寄付する事を決めたことから始まります。初めの劇場は当時の他の木製劇場によくあった問題、火事により1806年に失われてしまいました。その後何度もの改修、修復、再建を経たのですが1824年再び火事にみまわれます。幸運にも最小の被害ですんだためすぐに修復、再開することができたそうです。




VIP用の正面ボックスを拝借





 劇場の名前は我らがクレモナを代表するオペラ作曲家アミルカレ・ポンキエッリから名前を取って『テアトロ・ポンキエッリ』となりました。
クレモナ市営になったのは1986年からで今日もたくさんのクレモネーゼにクラシックのみならず多くの演目を楽しませてくれる憩いの場となっています。

 





●昨晩2月25日にアントニオ・メネセス(Vc)とオルガ・ザドロツニューク(Pf)のデュオがポンキエッリで演奏しました。

プログラムは;


 1:シューマン アダージョとアレグロ op.70
 2:ミュラー(1964-) チェロとピアノのためのソナタ2番(2011)
 3:ヴィラ・ロボス ブラジル風バッハ 2番
 4:フランク ヴァイオリンとピアノのためのソナタ(チェロ、ピアノヴァージョン)


 エンドピンを『ストンッ!!』と舞台に刺したら始まりの合図です。元々独奏ホルンとピアノのために作曲された曲で、ゆっくりとホール全体に響く優しいチェロとピアノ。コンサートの導入には文句無しのシューマンでした。

 2曲目は変わって現代曲。スイスの作曲家でチューリッヒのコンセルヴァトーリオにてチェロを学び、作曲家に転向したミュラー・ファビアンの作品。プログラムには「私の作曲活動の源はアルプスの自然と民族音楽への情熱からきています。一楽章のテーマを私は『アルプスのメロディーの感覚』と呼びたいが、とりわけこのソナタは二人の制作依頼者のために捧げるソナタで、主題のきっかけはMenesesの母音よりA-E-E-Es、伴奏のピアノはChristine e Federic Bodinの頭文字C-F-Bから始まります。」と彼の言葉があります。      流れるようなチェロの主旋律、2部のロンドではリズム遊びのようなピアノとの掛け合いが印象的でした。演奏後、メネセスが客席を見渡しどなたかを探す素振りを見せたかと思うと…舞台にミュラー本人が登場!作曲家と演奏家が同じ舞台に並ぶのは珍しく、聴衆も盛大な拍手でお迎えです。

作曲家ミュラーのHP▶ http://swisscomposer.efat.ch

 3曲目はブラジル風バッハの2番。3部構成の最後「カイピラの小さな汽車」はコンサート必聴です。汽車の出発から停車まで躍動感あふれるリズムで、「心躍る」演奏にすっかり魅了されました。

 最後はフランク。これも日本では多くの演奏家による音源がたくさんありますね。メネセスのフランクは全体的にパワフルだけど優しい仕上がりで、2部のアッレグロが終わるとあまりの出来に思わず拍手がわき起こりました。最後のアレグレットの高音域は弦楽器のキリキリ張りつめた音ではなくまろやかで、なおかつ伸び伸びと歌い上げていました。




演奏会後メネセスさんと1ショット♪と、偶然入った作曲家ミュラー氏
 コンサートは大盛況のもとアンコールに2回応え、無事終了。演奏会後に初めての楽屋口、5分前まで舞台の上で演奏していたチェリストさんを目の前に緊張しながら話しかけます。お疲れのところ、快くサイン、写真に応えて頂きました。イタリア語が堪能で落ち着いたトーンで「日本の方ですか?3月には東京や札幌に演奏しに日本にも行きますよ♫」とメネセスさん。もしかしたら皆さんの最寄りのコンサートホールへいらっしゃるかも?ぜひコンサート情報をチェックしてみてください。


メネセスのHP▶http://www.antoniomeneses.com 



 
 メロディーのクライマックス直前になると右足がひょいっと前に出て収束と共にスススッと元の位置に戻る所が見ていて微笑ましいメネセスさんでした。