9.22.2014

チェロのジュンタ クレモナ工房では・・・

No.3

 なかまうちではこうよびます。

表板と裏板でヴァイオリン、ヴィオラ、チェロはどれも2枚のブックマッチする板を張り合わせます。。
木の性質、トラ杢や木目模様の両方を考えてバッロック時代の基本理念”対称性”を実現しています。。。




 現代にいたっても工作はカンナで行われニカワで接着されます。




重要なのはカンナの質。調整されよく研がれた”道具”がストレスなく作り手のちからを十二分に引き出します。
弘法筆を選ばず・・ではあるのでしょうが・・選ばれた筆をつかえば。。。。

 一流の職人は日々、カンナの調整と研ぎを怠っていないはずです。





ニカワでの接ぎは夏の暖かい日にするようにしています。1~2分で固まってきてしまうのでいつも大急ぎです。

 元々が木という天然素材から丸太を製材するために切り出された板が台形になります。ときには片方が数ミリしかないときもあり、直線方向にしか力がかからないクランプでの接着は工夫がひつようです。

実際ピッタリかなと思いきや接着が弱い事もあり要注意です。
 チェロ、コントラバスには弦からかかるテンションが魂柱を伝わって裏板に大きくかかります。裏板にはとくに神経をつかいます。

 ヴァイオリン製作のスタート作業、ジュンタです。おおくのコツがありシンプルですが熟練の経験が必要だと感じています。

 古いクレモナのヴァイオリン、チェロたちも多くは開いては閉じてのジュンタの修理がされていますが、
いくつかはジュンタされてからそのまま400年・・・弦のテンションに耐えているものもあるそうです・・・






9.12.2014

ヴァイオリン工房製ペグ その2



まずは木工旋盤。




 よく見かけるタイプの物で汎用性が高いです。フリーハンドで製作するので、一点ものには力を発揮します。
 ペグの他にヴァイオリン、ヴィオラのエンドボタンを手作りします。デザインは自由にいろいろなオリジナルパーツを製作できます。



チェロの下についているのが19世紀まで使われていた
エンドボタン

 チェロのバロック・エンドピン、エンドボタン(ボットーネ)も製作いたしました。














 こちらは金工用の旋盤。

ヴィンテージ旋盤 時計職人などの細かなパーツ製作むき


全てのパーツを磨いて
よみがえらせます

ヴィンテージの物を掘り出し、オーバーホールいたしました。旋盤マニアの方々のサイトを見ているうちに小生も工房におきたくなり1週間かけて使えるまでにしました。メーカーはドイツでパーツなどを製作するためのガレージ旋盤として当時は発売されていたようです。



ヴァイオリン工房内ではもちろんペグ(ヴァイオリン~チェロ)を削りだしています。刃を固定し、ガイドによって操作しやすくしましたので形の同じものを数本製作するのに適しています。






 

バロック楽器を始めたのがきっかけとなってはじめたペグづくり。楽器といっしょに生み出されたペグです。









9.10.2014

ヴァイオリン工房製ペグ その1


ときにはペグを製作するhaja&Chi工房。

ペグ製作には欠かせない旋盤の紹介です。







16、17世紀の工房ではペグの製作をもちろん楽器工房内または関連工房で製作していました・・もちろんストラディヴァリ、グァルネリもです。。



 クレモナのヴァイオリン・ミュージアムにもPietro Guarneri(ピエトロ グァアルネリ)のミニ旋盤が残っています。

17世紀の工房風景を連想させる旋盤
旋盤でも小型のもの







 これは友人の弓職人が使っている手回し旋盤です。
ドリルの刃を付けて穴あけがメインですが、グァルネリの旋盤と同じ要領で軸を回します。フランスの手作りの弓職人の中にはいまだにこれを使っている多いようです。


 古くは木工用の旋盤が主流でしたが、ヨーロッパの時計産業の発展とともに機会仕掛けの金工用旋盤が進化していきました。現在もその子孫としてCNC旋盤がものづくり現場で産業を支えています。
 木工旋盤の基本的な構造は数百年前からほぼ変わってはいないもののイタリアでは至る所に”トルニート”(イタリア語で”旋盤でつくられた”の意)された家具のパーツやオブジェを見る事ができます。。
 労さえ惜しまなければ、個人工房でも十分に扱える憧れの工具の一つです。

 ヴァイオリン製作においてその必要性はとかく薄くなってしましいペグを製作するヴァイオリン職人はいません。現在皆さんがお使いの楽器のペグは9割以上が中国またはインド製です。それについでブルガリア、ドイツと並びます。

 そんな中、どうにか工房製の手作りのペグをあの16世紀の雰囲気で作り出せないかと数年前に旋盤を導入いたしました。ヨーロッパにおいてもペグを製作するヴァイオリン職人は少ないためガンバ製作者、リュート製作者にコンタクトをとり情報交換をいたしました。。

続く・・・



9.07.2014

イタリアの小さな町


 私達の住むクレモナから南東に約40キロのところにあるカザルマッジョーレ市(町)へ行ってきました。
目的は町の観光とその日催されていたアンティーク市です。

 距離的には比較的近いのですが、途中ピアーデナ駅で冷房無しのディーゼル車両に乗り換え、40分の電車の旅。
 駅から町の中心地までは一本道です。まずは町の真ん中、アンティーク市がたつガリヴァルディ広場を目指します。

 

ガリヴァルディ広場と正面にあるお役所
 町の規模からすると広場はとても大きく綺麗に整備され、やさしい色の建物に囲まれたとても可愛らしい作りです。正面には役所が見えます。
 一見、古そうな雰囲気をかもし出していますが実際は1800年代に作られた建物で、当時流行した”中世ふう”に見せるネオゴシックスタイルだそうです。広場もその頃までは土が敷き詰められた広場だったとか。









銅製のお鍋たち
 
 さて、お目当てのアンティーク市は…あれ?出ているお店の数が少ない!?実はこの日、ヴェローナ近郊で大きなアンティーク市がたち、皆そちらへ出店しているとのこと。むむむ、残念。でもクレモナでも月に一度ある市とは来ているお店が全く違う様子です。何か掘り出し物があるかも?











農具や馬具の他にも謎の金具がたくさんあります


 中でも私達の注目度が高かったのは農具の金具屋さん。農業用牛車や馬車にひかせた台車の飾り金具やそれを連結する金具、とんかち、クランプなどかなりマニアックなラインナップです。













おしゃれドアノブたち


 次にドアノブや、食器などに混じって発見したものはヴァイオリンのペグ&駒!ヴァイオリン職人がお店をたたむ時に買い取った品だそうです。楓ではないもの、下駄をはいているものなど様々です。










 アンティーク市を後にし、一路ポー河へ。クレモナでは町の中心から河まで自転車で10分くらいかかるのですがカザルマッジョーレは歩いて5分の所に河が流れています。そのため、過去に3回も大きな水害にみまわれたそうです。
 河沿いに町を進むとトッリオーネと呼ばれる大きな要塞があります。今はその塔部分のみが残るちょっぴり寂しい雰囲気の建物です。次は町の反対側にある一番大きな教会ドゥオーモを目指したのですがお昼休み中のため外観のみ拝見。




イタリア旅行によくある昼休みのため外観のみ…残念!


 建物の高さがクレモナに比べて低く、ポルティチと呼ばれるこの地方でよく見るアーケードの一種をもちいた建物があります。


イタリアのアーケード『ポルティチ』の下で

 クレモナよりぐっと小さなカザルマッジョーレ。


 こういう小さな町がイタリア全土にたくさんあるので、少しづつ見て知っていきたいです。


Chi(清水ちひろ)   https://www.facebook.com/hajaandchi?ref=hl

9.06.2014

ストラディヴァリ型チェロ クレモナ式内型

No2

 前回に引き続きストラディヴァリ"FormaB"チェロの制作。




横板を曲げてはられたチェロ内枠(内型) ストラディヴァリモデル”formaB”


 最近はいろいろな職人さんのブログなどでも紹介されているように、、日本、中国、韓国などのアジアの国々、中央南アメリカまで広く知れ渡ったクレモナ式制作方・・・ひとえにストラディヴァリあってのはなしです。

 この他にもいろいろな方法で曲げた横板を固定していました。。

内枠、外枠、簡易枠、枠無しなどその地域の伝統、生産性に対応して様々な方法がとられていたようです。。善し悪しではなくそれぞれにそれなりの利点と欠点があるように思います。
 小生は内、外、簡易をヴァイオリンで試しましたがしっくりきたのは内枠、簡易枠でした。。


まとめますと、
横板を外側に貼付ける内枠


内枠:
ヴァイオリンでは伝統的といわれるタイプ。たまたまクレモナでストラディヴァリが使ったため主流になったもので、西洋楽器においては早くよりリュートやギターに使われていたようです。












横板を内側に貼付ける外枠
外枠:
量産的といわれてしまうタイプ。。事実、19世紀よりフランス大規模工房、ドイツ工場ではよく使われ、、イタリアでも流行ってた模様・・21世紀クレモナでもモラッシはじめ多くの製作者が使っています。

 実は歴史は古く。。ルネッサン期のギターなどにはすでに使用されていたようです。。
現代では精度の高いレプリカ楽器などにもよく使われる手法です。



簡易枠:
部分的に枠組みがあり、大部分の横板をフリーハンドで曲げるタイプ。。
自由度が高く楽器の形がよく変えられます。そして変わります。ブレッシャ派でおなじみのガスパロ・ダ・サロはこのタイプではないかとの説です。。



枠無し:
枠無しで横板を曲げ、適当に固定していくタイプ。古くはコントラバス、チェロに使われたようです。なるようになる感じですのでもちろん対称性は無視しています。。実は結構な楽器がこれにて作られています。
 もう一つは表板、裏板の輪郭に合わせて横板をはめていく”枠無し”パターンもありこれは伝説的です。アマティと同時期または以前のヴィオラにはままあるようですし、一部のドイツ派も採用しています。。修理人泣かせではありますが・・試す価値アリです。


型なしで制作されたと思われるチェロ
Paolo Testore(パオロ・テストーレ)
左右がアベコベ・・

 ヨーロッパの伝統の中でいろいろな横板の制作方法があみだされてきました。
いまでは市販品もありますが製作家それぞれにアイディアや工夫をほどこした”型”も多くあります。制作工房を訪ねる際には目を向けてみてください・・・